薄毛は遺伝する、というのは誰もが耳にしたことがあるであろう話題です。祖父がハゲていると遺伝的に自分もハゲやすいなんていうのも聞いたことがあるのではないでしょうか。
では、頭髪の量というのは遺伝によって完璧に決められていて、抗うことができないのでしょうか。それとも、関連性を明らかにすれば、何か対処法が見つかるのでしょうか。
今回は、薄毛と遺伝というのはどのように関係しているのかというのを詳しく解説したいと思います。
エール大学の解剖学者ジェームス・B・ハミルトンの実験
1942年、薄毛と遺伝に関する非常に興味深い実験がアメリカの知的障害者収容所にて行われています。
こちらにThe Hamilton’s storyという英語の記事に詳しく書かれているので要約すると…
当時、アメリカの収容所では、知的障害者の攻撃性を抑えるために去勢が行われていた。
とある一卵性双生児の兄弟は、弟が去勢済み、兄は去勢されておらず、兄だけがハゲていた。
それに興味を持ったハミルトン博士は、去勢されている弟に男性ホルモンテストステロンを投与した。
その結果、弟も兄と同様にハゲた。
他の104人の去勢済み収容者にも同様の実験を行い、312人の去勢されていない収容者と比較を行った。
実験の結果、家族がハゲている去勢済み収容者はテストステロンを投与することでハゲるが、家族がハゲていない場合はハゲない傾向があった。
とのことです。
また、ここには書かれていませんでしたが、以下のような実験結果も出ているようです。
- 去勢前にハゲていた男性は去勢後ハゲが治り、テストステロンを投与すると再びハゲる
- 去勢前にハゲていなかった男性は、去勢後にテストステロンを投与してもハゲない
以上の実験結果から分かることは以下の2つです。
- ハゲる遺伝子を持っている人物は、男性ホルモンが原因でハゲる
- ハゲる遺伝子を持っていない人物は、男性ホルモンによってハゲることはない
なぜ、男性ホルモンの影響を受けてハゲる人とそうでない人がいるのか
ハミルトン博士の実験から、薄毛の原因は男性ホルモンのテストステロンであることが分かります。しかし、テストステロンの投与によってハゲる人とそうでない人がいるのです。
なぜ、同じ人間なのにこのような差が生まれるのでしょうか。
これは、男性ホルモンのテストステロン、そして、薄毛の直接的原因であるジヒドロテストステロンを受け取る受容体アンドロゲンレセプター(アンドロゲン受容体)の能力に個人差があるからだと言われています。
アンドロゲンレセプターとは、男性ホルモンに反応して、細胞内で利用できるよう変換する体内の装置のようなものです。
髭が濃い、体がゴツいなど、いわゆる男性らしい体つきの人は、男性ホルモンが多いだけではなくアンドロゲンレセプターが敏感なのです。
このアンドロゲンレセプターは遺伝子の影響による個人差があります。これが薄毛と遺伝の関係性なのです。
ちなみに、アンドロゲンレセプター遺伝子検査と呼ばれる検査方法があり、AGAクリニック等でハゲやすい遺伝子なのかを検査することが可能です。
ハゲやすい遺伝子を持っている場合の対処法
自分がハゲやすい遺伝子を持っているということが分かったとしても、「遺伝だから」と言って諦める必要はありません。この手の薄毛は原因がはっきりしていることもあり、対処法が確立されています。
一つはフィナステリドの服用です。フィナステリドはテストステロンを薄毛の原因であるジヒドテストステロンに変換している5αリダクターゼという酵素の働きを阻害してくれます。
また、フィナステリドに近い効果を持つ成分としてキャピキシル、オウゴンエキス等のフラボノイド系成分が効果的です。
参考:


