ストレスと薄毛の関係についての具体的な根拠と対処法

薄毛の原因はストレスであるとよく言われます。しかし、どうしてストレスが多いと薄毛になるのか、どの程度のストレスがあればどの程度の毛髪が抜け落ちるのかを具体的に答えられるという人はほとんどいないはずです。

ストレスというものはとても曖昧で、数値化しにくいものです。自分が「日本人の中で何番目に体重が重いか」と聞かれたら、「男性の平均体重くらいだけど、女性と子供も含めて考えたら3000万位くらいかな」と言えるのですが、「何番目にストレスを感じているか」と聞かれてもはっきりとは答えられません。

つまり、自分がどの程度ストレスを感じているかすら分からないという状態なわけです。そのような曖昧なものが原因で薄毛になっているとしたら、対処方法も難しくなってしまいます。

というわけで、今回はストレスと薄毛の関係をはっきりさせて、どのように対処すべきかを正しく理解していきましょう。

薄毛とストレスが関係していると言われる理由

まず、どうして薄毛とストレスが関係していると言われるようになったのでしょうか。いくつかネット上でストレスと薄毛に関する記事を調べてみました。信頼性の高そうなサイトの記事もあったので、取り上げながら解説したいと思います。

まずは医療法人昴会 野村医院のホームページを見てみましょう。ストレスを受けると自律神経が緊張し、血管が収縮して血行不良を起こします。そうすると、毛乳頭に送られる栄養が不足するため、毛母細胞の発毛力が落ちてしまうという話です。

毛髪を形成する毛母細胞は、毛乳頭から栄養を送られてその働きを活発にしますが、毛乳頭は
この栄養分を血中から吸い上げています。
それゆえ、血行が悪くなると十分な栄養分が細胞に送れなくなり、発毛力が落ちてしまうため、
薄毛の原因となります。
この血行をコントロールしているのが自律神経なのですが、強いストレスを受けると、
自律神経は緊張し、血管の収縮を起こします。
血管が収縮すると血流が減少するため、結果、血行が悪くなってしまいます。

出典:http://www.nomura-iin.com/baldness_stress.php

続いてヘアメディカルのホームページです。ストレスによってコラーゲンが不足し、毛母幹細胞の数が現象することによって髪が伸びなくなるという話です。

ストレスによってある種のコラーゲンが不足すると、髪の元になる毛母幹細胞の分化(毛母細胞への変化)が促進され、一方で分裂が抑制されるため、一時的に髪は伸びても毛母幹細胞の数が減少します。そこから誘導される毛母細胞も減ってしまい、結果として髪は細くなり伸びないというサイクルに陥ってしまいます。

出典:http://www.hairmedical.com/aga/aga-genin/

薄毛とストレスに関するデータ

ここである疑問が浮かびます。上記の説明が正しいのであれば、ストレスを多く感じている人がより薄毛になりやすいといったデータがあるのではと。

探してみた結果、化粧品会社のマンダムが医療法人社団Xanaduあやこいとうクリニック院長伊藤史子医師と共同で行った研究データが見つかりました。一部引用して解説します。

コルチゾールは、ストレスに反応して分泌されるホルモン(ストレスホルモン)の一種です。唾液中のコルチゾール濃度を測定することにより、ストレスの指標とすることができます。本研究では、30歳代、40歳代の男性24名を対象に、唾液中のコルチゾール濃度と毛髪の関係を調べたところ、コルチゾール濃度が高い人ほど後頭部の毛経が細いことが分かりました(図1)。

30歳代、40歳代の男性24名を対象に、新たなストレス指標である血清尿酸値と毛髪の関係を調べたところ、血清尿酸値が高い人ほど後頭部の毛髪における毛穴あたりの毛髪の本数が少ないことが分かりました(図3)。また、血清尿酸値が高い群では頭皮が硬いことも明らかになりました(図4)

出典:http://www.mandom.co.jp/release/2016/src/2016092901.pdf

人がストレスを感じると、コルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。このコルチゾールの濃度をストレスの度合いとした場合に、ストレスの度合いが高い人ほど後頭部の髪の毛が細いというデータが図1です。

コルチゾールの量は日々変化するものなので、データを取るためにコルチゾールを参照するのは不安定な部分があります。そのため別の指標として、この研究では血清尿酸値が使用されています。

血清尿酸値と毛髪の本数の関連性を表したものが図3、血清尿酸値と頭皮の硬さの関連性を表したものが図4です。いずれもストレスによって毛髪の本数が減る傾向、頭皮が硬くなる傾向を示しています

ストレスと上手に付き合うには

ストレスと薄毛の関連性を知ったところで、どうやってストレスと付き合っていくかという事を考える必要があります。ストレスとの付き合い方に関して、アメリカの健康心理学者であるケリー・マクゴニガル氏のスピーチが参考になるので紹介します。

彼女の研究によると、ストレスを感じることが健康に良くないのではなく、ストレスを感じると健康に良くないと信じている事が健康に良くないとのことです。これまでこの記事で散々ストレスと薄毛の関係性をを説明した事と矛盾してはしまいますが、とても納得のいく話でした。

スピーチの動画がTEDに上がっているので良かったら見てみてください。動画を見ない人向けに、発言の内容をまとめて今回は終わりにしたいと思います。

アメリカで3万人の成人の動向について8年間にわたる追跡調査を行った

参加者には2つの質問に答えてもらった

「去年どれ位ストレスを感じましたか」

「ストレスは健康に害になると信じますか」

公開された死亡記録を確認し、参加者の誰が亡くなったかを調査

ストレスを感じていて、ストレスが健康の害になると信じる人は43%も死亡率が高かった

ストレスを感じていないが、ストレスは健康の害になると信じている人よりも、ストレスを感じているがストレスは無害であると信じている人の方が死亡率が低かった

オキシトシン(日本では「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれる)は他人との親密な関係を強める行動を促すホルモンである

あまり知られていないが、オキシトシンはストレスホルモンである

ストレスを感じたとき、下垂体からオキシトシンが分泌され、人に助けを求めようとする

他にも、心血管系をストレスから守る役割がある

オキシトシンは他人との繋がりが強まることでより多く分泌される