加齢による薄毛のメカニズムとAGAとの違い

人は歳を取るにつれ、体の様々な部分が正常に機能しなくなっていきます。毛髪も例外ではなく、年齢と共に抜け毛が増え、一本一本の毛が細く弱くなっていきます。これを老人性脱毛症とも呼びます。

加齢と薄毛が関係している、というのはテレビで高齢のキャスターや政治家たちを見ていれば分かる事です。ただ、加齢による薄毛はどのようなメカニズムで起きるのか、AGA(男性型脱毛症)による薄毛とはどのように違うか、というのは理解するのが難しいところです。

それが理解できれば、自分がAGAによる薄毛なのか、単なる加齢による薄毛なのかを判断することもできるでしょう。

加齢による薄毛のメカニズム

加齢による薄毛について、東京医科歯科大学の西村教授が研究結果を発表しています。西村教授の研究によると、加齢によって毛包が小さくなり、生えてくる毛が細くなるようです。

毛包幹細胞は毛周期ごとに分裂しますが、加齢に伴って自己複製しなくなり、毛をつくる細胞を生み出す代わりに、表皮の角化細胞へと運命をかえたのち、皮膚表面から落屑する(フケ・垢として脱落していく)ことがわかりました。これによって毛包幹細胞プールとそのニッチが段階的に縮小し、毛包自体が矮小化(ミニチュア化)するため、生えてくる毛が細くなって失われていくことが明らかになりました。

出典:http://www.tmd.ac.jp/press-release/20160205/

こちらの記事で解説していますが、毛包内にある毛母細胞という部分で細胞分裂が行われ、毛髪は成長していきます。

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毛包内の細胞は、髪が抜けたとしても毛穴の中にそのまま残っています。加齢に伴い毛包内の細胞がフケとして排出され小さくなってしまうと、もう元気で太い毛は生えてこなくなってしまうのです。

加齢による薄毛とAGAによる薄毛の違い

AGAのメカニズムについておさらいをしましょう。

体内には男性ホルモンのテストステロンがあります。これは男性に多く、女性には少ない物質です。

これが体内の酵素5αリダクターゼと結合し、ジヒドロテストステロンに変化します。このジヒドロテストステロンは、非常に強力な男性ホルモンで、毛髪のヘアサイクルを乱してしまいます。

詳細はこちら:

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AGA毛母細胞が正常に機能しなくなっている状態ではありますが、あくまでもジヒドテストステロンの影響を受けているからそうなっているのであり、ジヒドロテストステロンから開放されれば元の状態に戻すことができます

AGAは治療が可能だと言われるのはそういった理由があります。ただ、AGAも長期間続けば回復不能な状態になってしまうので注意が必要です。

ヒトの身体を構成する細胞は、生殖細胞など一部の細胞を除き、DNAに存在する「細胞分裂の回数券」とも言われる「テロメア」の働きによってその分裂回数には限界があります。
ヒトでは細胞分裂の限界は約50回であり、毛母細胞も例外ではありません。
毛乳頭細胞からシグナルを受けて分裂する回数にも限界があるのです。

出典:https://www.gincli-aga.com/blog/2009/12/post_49.html

加齢による薄毛は、AGAの進行が進んで回復不能になった状態と同じ状態だと言えます。(もちろん、今後の研究次第では治療法が生まれる可能性はあります。)

つまり、あなたがAGAによる薄毛に悩んでいるのであれば、適切な対処法を取ることで治療が可能です。しかし、加齢による薄毛であれば、進行を遅らせる事はできても治療というのは難しいでしょう。

これといった明確な基準があるわけではないので、加齢による薄げなのかAGAによる薄毛なのかは判断が難しいところです。ただ、同年代の人と比べてどうかというのは一つの基準に成るかと思います。

もし、同年代と比べて薄毛の進行度合いが高いのであれば、AGAの可能性を考えて治療に取り組むのが良いでしょう。